窮鼠はチーズの夢を見る

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原作が映画化に合わせて出る新装版で改変が入ったごたごたがあったりしたので映画になるのは知っていたが、初めて映画館で予告編 を観たときには誰がやるのか知らなかったし何の映画なのか分から ず、成田凌が愛がなんだの時とはが逆のかまって欲しい方の不毛な役をやるようにみえたのが、すごく面白そうだった。
結果として大倉忠義演じる大伴も成田凌の今ヶ瀬もどちらも社会生活は問題なく送れるが、人間性も関係性も爛れていたダメ人間でと ても良かった。

しかしBLは映画の同級生くらいしか観たことがなかったので、R 15 なのに正直これほどとは思わず面食らった。きっかけはほぼ脅迫とレイプなのに受け入れちゃうあたりが、大伴の究極的な主体のなさ なのだろう。八方美人というよりも、引っ張られたからついて行っちゃう糸の切れた風船みたいに見えた。

間違いなく面白かったのだが、とにかく感情が追いつかない。スクリーンで何が起きているのか理解はしているが全くわからない。 大伴が月並みの我を持って流されなけれいいだけなのに、ただ相手 に流されるそれだけで身持ちを崩している。そこを否定するのがダメなのは、わかってはいるがとにかく気になってしまう。同性愛だ から不合理ということではなく、人間関係(とくに恋愛)において合理性、社会通念に沿うということに結果的に反する選択に走り出 していくのが、感情をぐしゃぐしゃにされたというよりも置いてきぼりにされた。
とにかく両方ともダメ人間なので「二人は結ばれました。デメタシ 、デメタシ」とは思えず、ハッピーエンドでも幸せでもなくて、堕ちるところに堕ちて二度と抜け出す気も起きなくなってるだけにしか見えない。最終的に落ち着くところに落ち着いているのだか不条 理そのもの。

結論としてはとても面白かったし、けっこう好きな映画だったと思 うが変な気分になった。